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講座レポート2022.06.27

【大館の地域資源】十ノ瀬藤の郷に魅せられて

ふくだみのり
ライター:ふくだみのり

田園風景の中に現れる、小さな藤園

田んぼに映る藤園

のどかな田園風景の中に、ぽつんと現れる小さな藤園。
十ノ瀬山の麓にあるこの藤園が『十ノ瀬藤の郷(とのせふじのさと)』です。

今回は2022年5月3日(火・祝)に開催された『【大館の地域資源】十ノ瀬藤の郷に魅せられて』の様子をレポートしていきますよ!

園内に一歩足を踏み入れれば、色鮮やかな藤の花と周囲を漂う甘い香りが訪れる人を癒してくれる特別な空間。
これまで撮影してきた数ある写真を中心に「地域活性化」「情報発信」「運営方法」などを学んでいきました。

十ノ瀬藤の郷のはじまりは

講師の石山さんとゲストの津島さん

講師を務めたのは、大館市デザイン事務所いしころ合同会社代表の石山拓真(いしやまたくま)さん。
いしころ合同会社では、毎年十ノ瀬藤の郷の運営サポートを行っています。
また、十ノ瀬藤の郷のオーナーである津島嘉弘(つしまよしひろ)さんもゲストとして登場してくれました。

十ノ瀬藤の郷は、今から約25年前に津島さんのお父様である津島弘(つしまひろし)さんが、かつてホップ畑であった土地を利用して作られた個人所有の藤園です。
津島さんは、亡き父が遺した藤園を受け継ぐために、剪定などの手入れ方法を一から学び、今も大切に管理し続けています。
そんな知る人ぞ知るスポットであった藤園を、自分がサポートできる範囲で何か地域のために出来ないかと思い立った石山さんが、津島さんに声をかけたことから全ては動き出しました。

思い思いの、講座参加理由

自己紹介を行う受講者の様子

当講座では、イベント期間中に運営サポートスタッフとして働いてくれる人を募集していたこともあり、まずは受講者同士で軽い自己紹介を行いました。
昨年もスタッフとしてお手伝いしたという方や、今年が初めてだけど参加してみたいという方。
そのほか地域活性に興味を持っている方が、それぞれの思いの丈を話してくれました。

はじまりから、現在に至るまで

十ノ瀬藤の郷のはじまりについて話す講師の石山さん

初めは地元住民しか知らない名も無い小さな藤園でしたが、藤ならではの「写真で映える」「日本らしい」「一瞬のはかなさ」に可能性を見出した石山さんは、まずは話を聞いてみようと津島さんから課題と悩みを聞き出したと言います。
津島さんの話を聞いた上で、いつでも、そして誰でも見られるわけではない点が強みだと感じた石山さんは、整備されていることが当たり前の観光地に対して、大変な思いをしてでも訪れたくなるような場所になってほしいと考えたのだそう。

同時に、写真で映えるということは、無名の藤園に名前をつけることで、SNSにおいて欠かせない「#(ハッシュタグ)」機能を活用し、口コミでこの藤園を知ってもらえるのではないかと思ったと話します。

そのような経緯でつけられた名前が『十ノ瀬藤の郷(とのせふじのさと)』。
人々が集い、笑顔あふれる『郷(さと)』となってほしいという願いが込められた名前は、インスタグラム・ツイッター・フェイスブックなど、各SNSでハッシュタグ化(同じキーワードの投稿検索・ユーザー同士の話題共有が可能)され、予想以上に人々の目に留まることになりました。

無名だった頃の藤園

主催者がどんなに「ここは素晴らしい場所です」と声を上げても、あくまでそれは主催者側の意見でしかないため、ターゲットにはなかなか響きません。
主催者側の声よりも、実際に訪れた来園者の声こそが、ハッシュタグ化いいね(SNSで共感などの意志を示せる機能)数の増加につながるといいます。

レッドオーシャン(競争の激しい市場や業界)に対し、ブルーオーシャン(手つかずの未開拓市場)である十ノ瀬藤の郷は、このようにして運営方法を定めていったのですね。

※上記画像は『十ノ瀬藤の郷』の名前がつく前の藤園(2017年撮影)

人気が高まったことで生まれる課題

運営サポートを開始した1年目の2018年度は、来園者が約1万人。
続く2年目の来園者は約2万人と、SNSや各メディア発信を中心に、十ノ瀬藤の郷に訪れる人の数は年々増加していきます。
しかし、多くの方が藤の花を楽しんでくれる一方で避けることができなかったのが、渋滞による周辺住民や近隣農家の方々への迷惑行為でした。

そこで、いしころ合同会社では2022年度より、大館市では珍しい以下の事例に取り組むことを目指したそうです。

①オーバーツーリズム(訪問客の著しい増加が、地域住民の生活・自然環境・景観などに負の影響をもたらすこと)の克服
②民間主導の観光地
③有料化・補助金を使わない自立した運営
④ビジネス化することで、地域活性化へつなげる

上記の取り組みを行うことで、2022年度は来園者数を5,000人にすることが目標であると石山さんは話します。

新たな仕組みづくり

2022年度の十ノ瀬藤の郷のチラシ

5月18日(水)〜同月31日(火)の期間で開園した、2022年度の十ノ瀬藤の郷。
今年は新たな試みとして、有料化(写真集付き入園券)駐車場の予約制を導入しました。
約2週間にわたる会期では、今回の取り組みを理解してくださる方にお越しいただき、目標としていた5,000人の来園者を少し上回る結果となりました。

当講座の終盤で、石山さんが話していた「マナーを守ってもらえる人に来てもらえるような仕組みづくりをしていきたい」という思いは、無事に達成することができたのではないでしょうか。
今回の取り組みを活かし、今後も安全な運営を民間で継続していく十ノ瀬藤の郷に目が離せませんね。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
ではでは!