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講座レポート2024.10.07

【⼤館から世界へ】資源不⾜を解消するカブトムシビジネス

大館学び大学
ライター:大館学び大学

昆虫の力で資源不足問題に立ち向かう

年々深刻化している環境問題ですが、世界人口の増加が原因の一つであると言われています。
重要な課題である環境問題に、大館の地から立ち向かう企業があります。

今回は2023年8月26日(土)に開催された『【大館から世界へ】資源不足を解消するカブトムシビジネス』の様子をレポートしていきますよ!

昆虫の力で、ゴミを資源化するという興味深い内容の他にも、起業して学んだことも教えてくれました。

全ての始まりは家出?!

講師を務めたのは、「株式会社TOMUSHI」代表取締役で、大館市議会議員の石田健佑(いしだけんすけ)さん。
石田さんは双子の兄で、家出歴7年。弟さんの方はなんと中学2年生から12年もの家出歴があります。双子揃って現在も家出継続中だそうです。

19歳の時に1度目の起業をしますが、失敗してしまいます。東京から大館に帰ってくることになり、しばらくは昼は家の中、夜はカブトムシを採りに双子で山に出かける生活をしていたそうです。
近所から噂されていたという「カブトムシをやっているニート」はなかなかインパクトのある言葉ですよね。受講者の方々も思わず笑っていました。

しかし、山にいたカブトムシはメスばかりで、ネットでカブトムシを入手しようとしたところ、なかなか売られていないことに気づいたそうです。
そこに参入できる可能性を感じ開設した、カブトムシを販売するネットショップは、なんと開設2週間で7万アクセスを記録しました。

販売するためにカブトムシを繁殖させますが、エサを他の虫に食べられてしまい経営難に陥ってしまいます。祖父母から出してもらった400万の資金も15万円ほどになったそうです。

そこで銀行に相談したところ、きのこ農家から出た廃菌床を譲ってもらえることに。経費削減のため、廃棄物の活用実験を始めました。ここでカブトムシが廃棄物を食べることに気づいたそうです。

TOMUSHIの事業

株式会社TOMISHIが解決しようとしている課題は主に、廃棄物の山・食糧難・地球温暖化の三つです。TOMUSHIは、燃やすことのないゴミ処理でこれらの解決の実現を目指しています。

その方法は大まかに以下の通り。
生ゴミや農業廃棄物を微生物の力でエサ化し、カブトムシの糞を畑の肥料にします。
さらに、魚、鶏、コオロギなどがカブトムシの粉末を食べることが実験でわかっており、カブトムシ自体の活用もします。

カブトムシは本来ゴミを食べるわけではないので、ゴミから作ったエサを食べる個体と食べない個体がいるそうです。TOMUSHIではゴミから作ったエサを食べる個体を掛け合わせて、たくさん食べる個体を作っています。
また、他企業と協力してカブトムシのゲノム編集も行っており、満腹になるホルモンを変化させて、廃棄物をたくさん食べてくれるようにする実験をしているそうです。
最初はカブトムシを売る会社でしたが、現在ではゴミを処理する会社になったと話されていました。

現在、日本国内に35ヶ所以上の小規模プラントをフランチャイズ展開し、運搬コストや工場を作るコストを削減しているそうです。
たくさんのメディアに出演し、営業をせずにフランチャイズオーナーを募ったり、事業の拡大を図っています。
取引先に選ぶ条件として、次の3つをあげていました。
・サステナビリティファーストで、利益は次
・活動を応援してくれる人
・ギネスを目指してくれる人

あくまでも地球のためにということで、万が一事業が失敗して損したとしても良いという人と一緒に仕事がしたいと、何よりも先に伝えるそうです。つまり、共感してくれる人を求めているというわけですね!

失敗から学んだこと

今でこそ事業を軌道に乗せている石田さんですが、1度目の企業は失敗してしまったという経験があります。講座の後半では、その失敗から学んだことも教えてくれました。

原因は主に二つあったそうです。
失敗①ビジョンが無かった
失敗②いいものを作ったら売れると思っていた


事業失敗の原因一つ目は、「ビジョンが無かった」ことです。
お金稼ぎが目当ての人、楽しくできればいい人など、各々違う方向を向いてしまっていたそうです。現在は「昆虫で世界を救う」という1つのビジョンがあり、共感してくれる人が集まっています。

二つ目の原因は、いいものを作れば売れると思っていたことだそうです。
いいものを作るのは大前提で、共感をブランディングすることに力を入れ、そのためにたくさんの賞を受賞し、実績を積みました。
そして、実績をマーケティングで広める活動にも力を入れています。
マーケティングの方法は、メディアの連鎖だと言います。地元新聞の北鹿新聞掲載から始まり、秋田魁新聞、全国新聞、テレビニュース、有名なyoutuber、書籍、というように、徐々に多くの人の目に入るようになっていきました。
 
「利益ではなく共感で人は動く」と語る石田さん。利益は希少価値、付加価値感情的要素によって得られるものとして捉えており、今後の企業に求められるものなのかなと考えているそうです。

本講座、最初から最後までかなり珍しいお話を聞けたのではないでしょうか。
双子の家出から始まったとも言える、昆虫の力でゴミを資源化するという事業。利益よりも何よりも、「昆虫で世界を救う」というビジョンをかかげ、地球の課題解決に独特の切り口で尽力しています。
利益よりも信念を貫く姿勢は見習いたいものがありました。


それでは、また次回のレポートでお会いしましょう!