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講座レポート2024.10.07

【大館の地域資源】十ノ瀬藤の郷新たな仕組みづくり

ふくだみのり
ライター:ふくだみのり

十ノ瀬藤の郷のはじまりと現在

講座の様子

2023年5月13日(土)〜23日(火)の期間で今年も開催が決定した十ノ瀬藤の郷(とのせふじのさと)。田園風景の中に現れる小さな藤園は、見る人の心を捉えるものがあります。

今回は2023年4月28日(金)に開催された「【大館の地域資源】十ノ瀬藤の郷新たな仕組みづくり」の様子をレポートしていきますよ!

昨年度から有料化し、駐車場が予約制になった十ノ瀬藤の郷。そのはじまりから現在に至るまでの経緯や、さまざまな実例を元に地域活性化の新たな仕組みづくりを学びました。
(本講座はZoomでのオンライン参加も行いました)

昨年度の講座開催の記事はこちら▼
https://chuko-manabi.jp/library/report-20220503/

名もなき小さな藤園からスタート

講師の石山さんと津島さん

講師を務めたのは、いしころ合同会社代表の石山拓真(いしやまたくま)さんと、十ノ瀬藤の郷のオーナーである津島嘉弘(つしまよしひろ)さん。
いしころ合同会社では2018年から毎年運営サポートを行っていますが、十ノ瀬藤の郷は今から約26年前に津島さんのお父様である津島弘(つしまひろし)さんが、かつてホップ畑であった土地を活用して作った個人所有の藤園です。津島さんは、亡きお父様が遺した藤園を受け継ぐために剪定などの手入れ方法を一から学び、大切に管理し続けてきました。

そんな知る人ぞ知るスポットであった名もなき小さな藤園を、自分がサポートできる範囲で何か地域のために出来ないかと考えた石山さんが、津島さんに声をかけたことから全ては動き出します。
まずは各SNSにおいて、ハッシュタグ化することで藤園の存在や口コミを広げるため、新たに「十ノ瀬藤の郷」という名前をつけました。

地域課題はビジネスチャンス

ビジネスチャンスについて話す石山さん

地域課題にはビジネスチャンスがあると話す石山さんは、レッドオーシャンとブルーオーシャンについて説明しました。
「競争相手が市場に非常に多く、競争が激化している状態を指すレッドオーシャン」と、「市場に競合相手がほとんどいない状態を指すブルーオーシャン」。地域課題があり、プレイヤーが不足している十ノ瀬藤の郷はブルーオーシャンであると話します。

しかし、手付かずの未開拓市場であった藤園に十ノ瀬藤の郷という名前をつけ、2018年から無料で開園したところ、SNS発信を中心に一気に人気が高まってオーバーツーリズム(訪問客の著しい増加が、地域住民の生活・自然環境・景観などに負の影響をもたらすこと)になりました。ピークは2019年で、来園者数はなんと約2万人だったそうです。
開催期間が田植えの時期と重なっていることもあり、地域住民の迷惑になってしまうなど課題は山ほどありました。石山さんは「無料で本当にいいのか……?」と悩んだ末に、「本当に見たいと思ってくれる人に見に来てもらおう」と決断したと話します。

そして昨年度から、地方や大館市では珍しい民間主導の観光地として有料化・自立した運営を行い、ビジネス化した地域活性を確立させました。

今年初の取り組みに挑戦!

新たなイベントについて話す石山さん

ここからは、今年初の取り組みについて紹介がありました。
1つ目は園内で撮影した写真を募る「十ノ瀬藤の郷フォトコンテスト2023」です。
十ノ瀬藤の郷の公式Twitter、Instagramのアカウントをフォローし、ハッシュタグ「#十ノ瀬藤の郷2023フォトコン」をつけて想いやエピソードを添えて投稿します。賞金5万円(1名)が贈られる大賞のほか、ガイドブック掲載賞(複数名)もあるので、藤の花を楽しみながら写真を撮って応募してみてもいいですね。

これまで撮影してきた数ある写真を紹介しながら、「足元から撮ると藤の花が被らずに映る」「真下から撮影するとちょっと変わったアングルになる」など、写真撮影時のポイントについて解説もありました。

写真撮影時のアドバイスをする石山さん

2つ目は、楽しみながら走ることを目的とした「十ノ瀬藤の郷ファンラン」です。
温泉・宿泊保養施設「たしろ温泉ユップラ(以下、ユップラ)」からスタートし、「十ノ瀬藤の郷」を目的地にジョギングペースで片道5kmのランニングを行います。スタート時間が開園前と閉園後に設定されているので、誰もいない藤園を満喫できるのが大きな魅力です。

また、開園期間中はユップラで写真展も同時開催する予定です。そのほか十ノ瀬藤の郷の園内では、ユップラで使えるお食事券も販売予定なので、藤の花を楽しんだらゆったり温泉に浸かっておいしいご飯を食べるのもオススメですよ!

幅広い参加者が集まる講座

zoom参加する受講者

講座も終盤に差しかかり、ここからはZoomでの参加者を交えて簡単な自己紹介を行いました。
参加者の中には大学生も多く、インターンシップとして実際に現地で働く方もいました。ほかにも地域おこし協力隊の方も集まるなど、実に幅広い層の方々が十ノ瀬藤の郷に関わることがよく分かりました。

また、開催期間中に入園券として配布する「ガイドブック」の中身を公開し、ガイドブックを作成することで来園者には十ノ瀬藤の郷だけでなく、周辺地域を楽しく回ってほしいといった想いを話す場面もありましたよ。

安全な運営を民間で継続していくために

質疑応答の様子

最後に設けられた質疑応答の時間では、受講者からさまざまな質問が飛び交いました。
中でも「最終的に藤園を引き継ごうと思った決め手や決断のきっかけは?」という質問に対して、オーナーである津島さんが答えた「当初、地域活性化ということは考えていませんでした。ただ、父が遺した藤園をこのまま終わりにするのが悔しかった。もう一花咲かせたいという想いが強かったです」という言葉には、石山さんを含めた受講者の皆さんが津島さんの想いに聞き入っている様子がとても伝わってきました。

昨年に引き続き、有料化(ガイドブック付き入園券)と駐車場の予約制を導入した十ノ瀬藤の郷。安全な運営を民間で継続していくため、「マナーを守ってもらえる人に来てもらえるような仕組みづくり」に取り組んでいきます。
持続可能性や想像力を誘発する藤園で、美しい藤の姿を見に足を運んでみてはいかがでしょうか?

それでは、また次の記事でお会いしましょう。