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講座レポート2022.02.17

【講座レポート】大館で新たなお仕事開拓 ライター養成講座 第3回

大館学び大学
ライター:大館学び大学

人口3,000人の町の、ローカルフリーペーパー

長く続くコロナ禍において、大きく変わりつつある働き方。
大都市にしかないものがあるように、地方にしかないものだってたくさんあります。
UターンやIターン、Jターンなど、これまで注目されていた言葉も、今の時代はよりリアルなものに感じられるかもしれません。

今回は2022年1月26日(水)に開催された『【大館で新たなお仕事開拓】ライター養成講座』第3回目の様子をレポートしていきますよ!

ライター養成に焦点を当てた当講座では、人口3,000人の町だからこそできる、地域に寄り添った雑誌づくりについて学んでいきました。

ライターは住民、取材対象も住民

「プロじゃない私たちが作り上げたとんじこんじ」というタイトルで講師を務めてくださったのは、藤里町ローカルメディアとんじこんじ編集部さん。
当日は根岸那都美さん(※画像左)と夏井明世さん(※画像右)のおふたりに会場入りしていただき、佐々木絵里子さんと細田航佑さんがZoomを通して参加しました。

2015(平成27)年度に第1号が発刊された『とんじこんじ』は、藤里町で年に1冊のペースで制作され、2021年3月には第6号が発行されています。

住民が住民のことを取材して執筆を行うことに軸を置いている『とんじこんじ』の大半は、ライター経験がほとんどない人の手によって作られています。
1号目から最新の6号目に至るまでの推移も、ページ数を見れば一目瞭然。
まっさらな状態からスタートした、6年間の積み重ねが確かに感じられました。

地域を立体的に、そして愛着を

『とんじこんじ』の産みの親は、その土台をつくってくれる藤里町。
だからこそ、『とんじこんじ』はみんなのものであると話す根岸さん。
目指しているのは、地域を立体的に見て愛着を深めること。
知っているようで知らなかった部分も、取材を通してその人の想いを掘り起こすことで、その人自身が立体的に浮かび上がってくるのだそう。
取材という口実で隣家訪問できることも、このビジョンにつながっていると話します。

また取材時には『想いここにあり』という聞き書き集を参考に、初心者でも取り組みやすい「聞き書き」を採用しているそうです。
お宅訪問して話を聞く「取材」、聞いた内容を全て文字に起こす「執筆」、話の前後を入れ替えたり削ることで全体を組み立てていく「編集」の3つに分かれている聞き書きは、聞き方はもちろん、編集力が問われるのが特徴なのだとか。
大変だからこそ身につく力も大きい聞き書きから、ライターとしての一歩を踏み出していくプロセスが感じられました。

企画も交渉も、地域に寄り添います

企画時は、自身の頭や心の中にあるものを掘り起こしてネタを探す「あるもの探し」をベースに進めていくという編集部のみなさん。
この「あるもの探し」は、シンプルな問いからスタートしていくのがコツなのだそう。
地域で暮らしているからこそ出せるネタや、生活者目線に立ったときにはじめて生まれる企画こそ、住民がつくる強みであると話します。

またプロやアマチュア、参加年数や年齢、出身地に関わらず、幅広く多様な人が活動している『とんじこんじ』では、メンバー全員がフラットでいることを大切にしていて、フラットでいることはメンバーに限らず、地域においても当てはまるそうです。

企画が特定の人や地域、団体などに偏らないように配慮したり、取材交渉時も既存の関係が崩れてしまう可能性があれば、取材自体を取りやめることもあるのだそう。
また取材者本人だけでなく、その家族への配慮も忘れないようにしていると話します。

掲載後も同じ地域の中で暮らしていく人たちだからこそ、細かな配慮のひとつひとつが大事になってくることを学んだ場面でした。

仕掛けるのは、あくまでもこちら側

ここで話し手を細田航佑さんにバトンタッチして、Zoomを活用しながら取材時に必要なコミュニケーション力について学んでいきました。
高校生のときに初めて取材に同行した細田さんは、「相手の懐に入り込んでその魅力を引き出すこと」「相手が言葉にしたこと以上のものを汲み取っていくこと」の大切さを学んだと話します。

相手が思っていることや感じていることをしっかり咀嚼して確認し、相手が身構えないように意識しながらも、徐々に踏み込んでいくコミュニケーション力を培うにあたって、「仕掛けるのはこちら側」と話していたことが印象的でした。

取材について話す細田航佑さん

また交渉時と同様、小さな地域で一緒に暮らしていくからこそ、言われた約束はきちんと守るなど、信頼を損なわない行動をとることの大切さについても話してくださいました。

取材時だけではなく、普段から地域に関心を持って人とコミュニケーションをとることが、知らず知らずのうちに取材のネタになることもあるそうで、そうした日常の積み重ねがいい記事につながることもあるそうです。

目指しているのは「客観」

お次は発刊時から現在に至るまで、『とんじこんじ』に携わってこられた佐々木絵里子さんが、Zoomを通して主観と客観のバランスについてお話ししてくださいました。

書き手の感じたことがメインになる「主観」と、インタビューされる側がメインになる「客観」。
『とんじこんじ』では取材対象を全面に押し出すため、客観に重きを置くことを目指していると話します。
とはいっても住民ライターの多くは主観に偏りやすく、「私」が前に出てしまうことがよくあるそうです。
主観と客観を意識して書くこと自体が難しい作業になるそうですが、「私を消す」ことを意識しながらも、すぐには文章を却下せずに何度もやり取りして編集するそうです。

その一方でライター自身も地域の一部であると話す佐々木さんは、ライターの主観を取り入れることで、多面的に地域を表現できる場合もあると話します。
そこにはローカルマガジンならではの面白さや、住民ライターの強みが詰まっているのだそう。

どんなに私を消しても残ってしまう主観。
そこにはプロもアマチュアも関係なく、「その人物を取り上げさせてもらう責任をもち、どこを面白いと思って話を切り取るか」「ライターによって異なるコミュニケーション力を活かしながら、記事ごとに主観と客観のバランスをとること」が重要であることを話してくださいました。

あせらず、自分のペースで

「あせらず自分のペースで進んでいく」という意味の「とんじこんじ」。
昔から使われてきた藤里町の方言がタイトルになっている『とんじこんじ』には、6年という歳月を通してその意味や想いが溢れんばかりに込められています。

最後はローカルならではの苦労話を話していただきましたが、みなさん共通していたのは、「『とんじこんじ』が挑戦する機会をくれた」ということ。
ローカルならではのライティング術はもちろん、みなさんの藤里町への熱い想いが感じられる講座でした。

ではでは、また次の記事でお会いしましょう!

ライター養成講座第1回講座レポート▼
https://chuko-manabi.jp/library/report-20220112/
ライター養成講座第2回講座レポート▼
https://chuko-manabi.jp/library/report-20220119/
ライター養成講座第4回講座レポート▼
https://chuko-manabi.jp/library/report-20220202/