保育のスキルアップを目指して
2023年7月22日(土)に、『【年⻑さんならではの充実した遊びと⽣活】5歳児のカリキュラムと保育者の役割』が開催されました。
今回は、大館学び大学初の保育者向け講座。受講者は、実際に幼稚園や保育園に勤務する保育者が中心でした。
幼児教育のプロフェッショナルに学ぶ
講師は、幼児教育のスーパーバイザーとして活動している相⾺靖明先⽣です。⼤館市出⾝の相馬先生は、幼稚園教員や大学准教授などを経て、現在はフリーランスで活動中。北は青森県八戸市から、南は兵庫県姫路市まで、全国各地の保育園・幼稚園を訪問して園内研修を行っています。
保育のプロフェッショナルである相馬先生から直接お話を聞ける貴重なチャンスとあって、受講者の皆さんは、一生懸命メモを取りながら前向きに取り組んでいました。
保育者の読み取りと保育記録
今回の講座は、小学校への進学を控えた年長さん(5歳児)の保育に関する内容がメイン。実際に相馬先生が指導している認定こども園の保育記録を紹介しながら、着眼点やまとめ方などを解説してくれました。
周囲の子との関わりや、その子自身の変化、作業を始めたきっかけなど、ひとつひとつの言動から、その子の成長や発達について保育者が読み取った内容が細やかに記録されています。
エピソードひとつ取っても、それに関わる子どもたちにはそれぞれの思いがあると話す相馬先生。1つのエピソードを起点にして、「こういう可能性があるのでは?」と考えていくことで、より中身のある保育記録になるそうです。
デジタル時代のリスクとICT活用例
続いては、デジタル時代の幼児教育・保育について。海外のカリキュラムの説明などを取り入れながら、デジタル化に対応する乳幼児期の教育とケアの重要課題に関するお話が進みます。
2歳以下については、とにかくスクリーンタイムをいかに少なくするかが大切。また、「デジタルの初期教育では、『ここをさわったらこうなる』という、操作に関する“感覚の芽生え”で十分」だと相馬先生は話します。デジタルのリスクを感じられるようにしておくことが大切なのだそうです。
また、「テクノロジーは、デジタルではないものをデジタルに置き換えるのではなく、あくまで補完するもの」というお話の中では、参考文献を用いて、ICT教育の実践例の紹介もありました。実際に保育に取り入れる際に参考にしやすい内容が多く、受講者の皆さんも、とても興味深げに聞き入っていました。
子どもの主体性を尊重するために
更に相馬先生は、「何歳児クラス」という学齢別のグループ分けが保育の実態に合わなくなってきていると話します。待機児童問題がおおむね解決し、子どもたちが入園するタイミングにバラつきが出ている昨今では、発達の特性や過程、課題に応じた環境構成が望ましいのだそうです。
また、年齢層が幅広い子どもの集団を少人数の保育者がみていく中で、どうやってそれぞれの子どもの主体性を尊重していくかについてのお話もありました。遊びや午睡、食事などについて、さまざまな工夫のしかたを紹介。その上で、「アイディアを総動員して対応していくことが大切」と話していました。
多年齢の関わりが遊びを豊かにする
5歳児の遊びの豊かさには、4歳までの間に身近で一緒に活動していた5歳児の姿が大きく関わってくるのだそうです。下の年齢の子どもたちは、上の年齢の子どもたちの真似をし、更にしばらく経つと同じことができるようになります。危険を回避しつつ年上の子どもたちの遊びに触れ、吸収できる環境をうまく作ってあげることが重要だと相馬先生は話します。
また、5歳児にはモデルになる存在がいないので、意識的に大人が働きかけていかないといけないとのこと。年度の前半には年長児として責任を持って取り組む活動を取り入れ、後半になったらそれを4歳児に引き継ぎ、5歳児だけの新しい体験・活動を作ります。5歳児が関わる大きな行事は12月までにし、1、2月は自分たち自身が思いついたものを実現できるという体験につなげていくといいそうです。
たとえば、多数決を取った時に選ばれなかった意見に対して、「これもよかったから今度やってみようか」という働きかけを繰り返していくと、子どもたちから「あれもやってみたい!」という意見がたくさん出てくるようになります。そうなると、先生が引っ張らなくてもどんどん子どもたち主体で話が前に進んでいくのだそうです。
受講者の声を紹介します
小学校入学を控えた5歳児の遊びと生活を中心に、幼児教育について学びを深めた今回の講座。
受講者からは、
「5歳児の遊びや、それまでに経験しておくことが知れて、とても勉強になった」
「園でも活用できそうなところは実際にやってみたい」
「また幼児教育に関する講座を開催してほしい」
などの感想が上がっていました。
スキルアップを目指す保育者の皆さんにとって、とても貴重な時間になったようです!
では、また次回の講座でお会いしましょう!